パニック障害体験談その① パニック発作の前兆
僕が最初のパニック発作に襲われたのは、5年前の事です。僕はその時、以前勤めていた運送会社を辞め、古い友人の紹介で精密機器を生産する工場のラインで仕事をしていました。
僕の直属の上司というのは、仕事を紹介してくれた友人と言うのもあって、上下関係もなく気軽に話せる良好な仕事環境でした。その上司も僕が友人である為に、普通の新人にはやらせない仕事を僕に教えてくれて、僕も戸惑いながら友人の期待にこたえる為にも一生懸命仕事を覚えました。
しかし、入社して一月ほど経つと、だんだんとその友人の口調が変わり始めました。「なんで、こんな事もできないの?」とか、「まだ、やってんの?仕事がおそいよ」と言う風に、僕に対しての態度が明らかに今までと変わってきました。僕もおや?と思いながらも、「ゴメン、すぐやる」と明るく返答していたのですが、友人の指摘はそこから日々厳しくなっていきました。
周りの人は、「入社して一月でそんな事が出来るわけない」などといって僕を元気付けてくれたので、僕も気にせず、毎日明るく仕事を続けていました。
さらにもう一ヶ月ほど経って、友人は僕に仕事を任せてくれるようになりました。正直、入社二ヶ月の僕の力量では少し難しい仕事でしたが、友人の期待をひしひしと感じ、毎日遅くまで残業して仕事に取り組みました。やる気も満々で、残業などには全く抵抗がありませんでした。
仕事上、1mmの誤差が出れば、不良品と扱われる精密機器の現場であったため僕は、不良品を出さないよう細心の注意を払って仕事をしていました。また、その友人も、上司として日々不良品を出さないように、周りの従業員にもきつく言っていました。そういった事もあったので、僕は、ゆっくりでも、慎重に不良品を出さないように作業をしていました。
そこに、友人がやってきて僕にこういいました。「お前は仕事が遅すぎる。もっと早くやれ。不良なんか出しても構わないから早くやれ。そうしないと、間に合わない」。上司としての友人の言動は最もですが、この友人の「不良なんか出しても構わないから早くやれ」といういつもとは矛盾した言葉が、僕の中にある、友人との十数年間の信頼を一気に崩すような気がして、急に激しい頭痛に襲われて目の前が真っ白になり、急いで機械にもたれかかりました。
僕は、この友人とのやりとりの後に、ふらついて倒れそうになった事を、誰にも言いませんでした。もしかすると、毎日遅くまで残業をしていたので、たまたま、疲れが出たのかもしれないし、その時、実家から出て一人暮らしを始めたばかりだったので、新しい環境に体が順応できてない可能性があると思ったから、あえてその事実は誰にも言いませんでした。
しかし、そのやりとりの翌日から、友人と話すと頻繁に頭が痛くなり、その頭痛は次第に頻度を増して、友人と話している時以外にも起こるようになりました。遂には、仕事の事を考えるだけで、頭が痛くなり、心臓までがバクバクするようになってきました。それでも、頑張って仕事にいっていたのですが、仕事中の動悸や頭痛は全く消えませんでした。今思うと、これがパニック発作の前兆だったのだと思います。

